この前は、サブスクに話が流れてしまいましたが(笑)、気を取り直して考察(…大げさですが汗)してみました。
まず、この「夜に駆ける」という曲には元になる「タナトスの誘惑」という物語があります。
とっても短くて5分位で読める物語なので是非読んで見てください!
読まれましたか?
「タナトスの誘惑」を読んでから「夜に駆ける」を聴くと、どっぷりと世界観に浸れます。
小説や漫画を映画化するのはよくありますが、ショートショートのような物語を曲にするってあまり聞いたこと無いですよね。作曲って、こういうアプローチもあるよなぁと感心してしまいました。
とても収まりが良いというか、5分で読める物語が同じく5分の尺で余す所なく1曲に収まっているなぁ、と。
やりすぎ感も無いし、物足りなさも無い。
「夜に駆ける」を最初に聴いたとき、歌詞を聴き取り想像しながら、ああ、これは「自死」に関する曲なのだなと思っていました。
それは、「タナトスの誘惑」を読んで確信になりました。
登場人物は僕と君。彼氏と彼女の関係のようです。
どうやら彼女の方に自殺願望があり、たびたび自殺未遂を起こしていて、その度に僕に引き止めてもらっている。そんな切迫しているけど、死が繋いでいる歪んだ愛情にどこか安心する二人。
それが音楽にもよく現れていました。キーはE♭、BPMは130と少しアップテンポ。言葉数も多くて、口ずさむと舌の良いトレーニングになりそう。。。
このテンポ感と言葉数の多さも、二人の若さや不安定さを上手く現しているポイントです。
ちなみに、曲の中でも印象的な「チックタックと」というフレーズは原作にはありません。
でも、時計の音に急かされている気持ちになりますし、モタモタしてると今にも飛び降りちゃいそうな危ない感じも伝わってきます。
歌っている内容は決して軽くはないけど、爽やかな音楽が重なって不思議な感覚にもなります。
「死」と隣り合わせなはずなのに何だか幸せそうなんです。何でだろう?って、何だかモヤモヤしていたんですよね。
で、「タナトスの誘惑」を読んで納得しました。「タナトス」っていうのは死神。
よく「エロス」が愛(生)の神で、「タナトス」が死の神で〜って引き合いに出されたりします。
人間にとって「エロス」も「タナトス」どちらとも切り離せない存在です。私たちは生まれた時から死ぬことが決まっています。
でも、毎日「死」と向き合っていたらとてもじゃないけど普通に生きていられないですよね。
「夜に駆ける」の中でも“彼”は自分が「死」に向かっていることに気づきません。
死にたがっているのは“彼女”の方で自分は引き止めなくてはいけない!、と思い込んでいます。
ですが、そんな彼女を何回も何回も引き止めているうちに疲れた彼は「終わりにしたい」と、つい言葉にしてしまうんです。
その時、彼女が初めて笑ったのです。
同時に初めて彼は気づきます。
彼にとってのタナトスが彼女であることを。
「タナトスの誘惑」を読む前は、彼女の方が死にたがっているのだと思っていたのですが、彼の方だったようです。
いや、死にたいとも思っていないのかも。彼にとっての「死」は生の延長ってだけかも。
彼女の正体がタナトスと知ったときに、二人は手を繋ぎ、夜に駆け出していくのでした。
公式のYouTubeがありますので、そちらを見ながら聴くと更にイイです!
8114万回再生ってどういうこと!?(笑)
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